漫画(アニメ)『ダンダダン』の冒頭で描かれる性描写の不快さについて、未成年の女性に対する性暴力のコミカル化という批判が挙がり、それに対して「女性が機嫌を損ねている」という意見が出てきて対立している。
私もその不快感に同意するが、これは単なる男女の対立という問題ではなく、メディアにおけるステレオタイプの再生産という本質的な問題もあると考える。
映画や物語には「マジカル・ニグロ」という表現がある。これは主にアメリカ映画で見られるキャラクター像で、特別な力を持つ黒人が主人公(多くは白人)を助けるというものだ。例えば『マトリックス』の予言者「オラクル」や『ショーシャンクの空に』で主人公を助ける「レッド」がこれに該当する。
この表現の根底にはステレオタイプが存在し、それが様々な映画で繰り返し再生産される中で「マジカル・ニグロ」という問題として認識されるようになった。作り手に悪意はなかったかもしれないが、ステレオタイプの再生産は無意識的にも起こり、往々にしてマジョリティがマイノリティに対して行使する。アメリカ映画界において、白人がマジョリティ、黒人がマイノリティという構図がある。
では、漫画におけるステレオタイプの再生産はどのように行われているのか。その一例が冒頭で触れた女性の描かれ方である。『ドラえもん』のしずかちゃんにも日本人女性的なステレオタイプが反映され、同様に男性キャラクターにも男らしさという固定観念が投影されている。
このようなステレオタイプによって特定の役割を担わされる人々は、本来なら別の描写が可能であったり、そもそもその描写自体が不要な場合でも、無意識のうちに選択されている。少年誌では特に、女性がいわゆる「ラッキースケベ」の対象として描かれ、それが肯定的な出来事として繰り返し表現されてきた。こうしたステレオタイプは、漫画や映画を通じて視聴者の意識にも浸透していく。
性別に基づくこれらのステレオタイプは、特にジェンダーバイアスと呼ばれる。映画における「マジカル・ニグロ」が問題視されるようになったように、漫画においてこれまで潜在していたジェンダーバイアスが今、顕在化しつつある過程だと考えられる。
テレビアニメが子どものジェンダー意識の形成に及ぼす影響 : 内容分析と子どもへの聴き取り調査を中心として
https://toyoeiwa.repo.nii.ac.jp/records/122
差別はたいてい悪意のない人がする
https://www.otsukishoten.co.jp/book/b585887.html
間違えていたら教えて下さい。