BLOG 2021.01.10

表層を撫でるように見る-ゲームごとの触れ方についての所感

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ゲーム内でリアルな空間を移動できたり広大な世界を冒険したりできるが、触れる感覚がほぼ無いので没入感が得られないことが多い。
ゲームによって触れる度合いが違ってくるので、いくつかのゲームでの所感をまとめる。

グランド・セフト・オート

このゲームを初めてプレイしたときに、街の人や車といった3Dモデルがただの凹凸ではなく乗ったり壊したり状態や属性をプレイヤーが変化させることができることに驚きと面白さを覚えた。

オープンワールドであることや、リアルな都市を演出する事によってその世界をプレイヤーの意思で移動することができる事も没入感を生み出すが、触れる度合いはとても低い。

建物の扉には開くものと開かないものがあり、置かれている3Dモデルは移動できないものもある。その度にプレイヤーにテクスチャだけの空間であることを痛感させるのだ。

マインクラフト

マインクラフトはテクスチャが持つ情報をブロックが持っている。

多くの3Dモデルは、テクスチャが貼られていてもそのテクスチャが持つ情報をその物体が持っていないのに対して、マインクラフトはテクスチャによってその3Dモデル(シンプルな正方形のブロックではあるが)の特徴や動きが変化する。

マインクラフトの世界でのルールは現実とは異なる事が多いが、そのルールの上で物を作ったり壊したり、形を変えることができる。

現実が高解像度であることに対して、驚くほどに低解像度なルールではあるが、その世界に触れる感覚は少なからず存在する。

グランド・セフト・オートとは対極的である。

あつまれどうぶつの森

マインクラフトと同じサンドボックスゲームのどうぶつのもりは、テクスチャが持つ情報は皆無でその組み合わせはインテリアとしてのオリジナリティを楽しむためにある。

グランド・セフト・オートのテクスチャとオブジェの属性変化と、マインクラフトのサンドボックスの形式を組み合わせて、オープンワールドでは無くなったもののようである。

このゲームは撮影やSNSでの画像のシェアが前提としてあり、3Dモデルも最終的に画像として見せる画面を作成するために存在している。この特徴はグランド・セフト・オートともマインクラフトとも異なっており、そもそも触れるための設計がなされていない。

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

ブレスオブザワイルドはテクスチャや素材に特性をもたせているが、それが素材に触れる感覚につながることはない。むしろゲーム内の現象のルールがあり、そのルールの世界を広く移動できるという感覚の面白さが強い。

これはマインクラフトで得られる感覚に近いが、地形やテクスチャに対してはただの凹凸として捉えることしかできない。火が燃え移ることや風に乗ることができるなどは現実の現象の解像度に比べるととても低いが、アイテムが物体として置かれたり落とされたりすることや、それが地形の属性によって状態が変化することはマインクラフトとは大きく異なり、地形の凹凸に対するプレイヤーの没入感を生み出す。

地形の凹凸と属性による変化に敏感になることから、ゲーム内の世界を移動する感覚を作り出すが、凹凸や属性はそれを利用して状況を打開することのために用いられ、触れる感覚にはつながらない。

レースゲーム

グランツーリスモやGRID AUTO SPORTを始め、シミュレーションゲームとしてのレースゲームは触れる感覚がとても強くある。そもそも移動範囲が決められており、その範囲でのリアリティの追求に特化しているからだろう。

コントローラーにコースの凹凸やエンジンの回転数に応じて発生する振動は触れている車からのリアクションをプレイヤーに与える。

ゲーム内の物理的なルールは現実に限りなく似せて作られており、プレイヤーの予想を裏切ることは限りなく少ない。

個人的には触れている感覚や没入感に関して言えばシミュレーションゲームとしてのレースゲームが最も優れているように思える。レーシングドライバーが練習のためにシミュレーターを使用していることからも、再現度を上げれば現実に限りなく近づくのだろう。

VRよりもAR

VRが没入することができる技術として一世を風靡したが、私はARのほうが没入感が強いと思う。

VRでは、その映像世界にふれることができないので、四方を見渡すことができる映像でしかない。それに対してARは、触れることができる世界のルールに映像が重ねられるので、自身の身体との比較でのスケール感や、足の設置感とその地面の延長を映像に見ることができる。

iphoneやipadのカメラを用いて空間の3Dスキャンを容易に行えるようになり、ARに特化したアプリケーションやゲームが開発されていくだろう。

実際にプレイしたアプリにRC Clubというゲームがある。このゲームはカメラで捉えた空間に3Dモデルのラジコンカーが設置され、それを操作することができるゲームだ。カメラで捉えた空間はリアルタイムで3Dスキャンされ、設置されたラジコンカーは実際にある壁にぶつかったり、物の裏に隠れたり、机から落ちたりする。

ゲーム内のルールに対してプレイヤーが合わせてその上でその世界に入り込むゲームに対して、私たちの世界のルールにゲームが合わせてくるARは触れる感覚を伴ったものになる。空間に設置された3Dモデルに触れることができなくとも、その3Dモデルが触れている現実空間に触れることができ、その3Dモデルを通しても現実空間に触れることができる事がARの面白さなのだろう。

 

メインビジュアル引用:ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド

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美術をやってます。絵を描いてます。たまに音楽を作ってます。
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