BLOG 2024.01.27

ダウンタウン=ジャズメン説

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松本人志のことで色々騒がしいですが、個人的にはこの騒動、どうでも良いです。芸能人のスキャンダルって興味ないんですよね、我々の生活に関係ないし。

ただヤバいと思うのは、メディアによって右往左往している人たち。

主にSNS系の愚民です。

週刊文春という偏差値30以下の週刊誌を根拠に、松本を槍玉に挙げる層。それを拡散したり、恥ずかしくないんですかね?「自分はバカです」って言っているようなもんじゃないですか。まあ騒いでいるのは、エセフェミニストや、なんでも良いから叩きたい人たちなんでしょうけど。

現時点で、この問題の法的な判断は下っていません。だから我々がどうたら言っても無駄なわけです。

だから、今ここで松本人志の擁護や批判をするつもりはありません。

ただし、私が彼らから受けた影響は計り知れないものだというのは、紛れも無い事実なわけで、良い機会だから(?)、ダウンタウン小論を書く次第です。

ダウンタウンとは何者だったか?

兵庫県尼崎市という工場地帯に育った彼らは、独特の感覚を身につけ悪童っぷりを発揮します。

面白いおっさんを観察する、外国人のパンツを盗む、同級生女子のパンツを釣竿を使って盗む、同級生の家の合鍵を作って留守中勝手に中に入ってくつろぐ……

と、まあ犯罪まがい(というか犯罪)な遊びをやってたわけですが、昭和の下町の悪ガキのそれであって、ガキ使のトークでよく語っていることです。

それでも面白い話だから、こっちも笑ってしまう。

面白ければなんでもOK。

そんなノリで東京進出してから数十年、今の地位に居続けます。

信じられないことに、90年代から2024年の今に至るまで立場が変わらないのです!

ダウンタウンより面白いお笑い芸人を、私は知りません。
お笑いBIG3と称されるビートたけし、タモリ、さんまより面白いし、ダウンタウン以後の中堅若手芸人より面白い。

他にいるなら教えて欲しいほどです。

 

……それにしても、笑いというのは難しいもので。

「ダウンタウン以前、ダウンタウン以後」とはよく言われます。

かつて萩本欽一が観客より上に立ち、100%男と称されました(その週の欽ちゃんが出ていた番組を全部合わせると視聴率が100%超えるという現象)。ここでツッコミが観客、視聴者より上に立つ構造が生まれた。

そしてビートたけし。ツービートのたけし、というより、単独でビートたけしとしての認知力が高まり、結果、ボケのたけしが観客より上から目線な笑いをするようになった。

そして、ダウンタウン。

この2人は、どちらも上から目線。最近はやや落ち着いてますが、特に90年代半ば、具体的には松本が坊主にするまでは、メラメラとした殺気で満ちており、それは画面越しでも感じられるほどです。

彼らの功罪をあえて言えば、「(俺らの)笑いが分かる人と、分からない人」というのを明確にしてしまったことです。つまり、「笑いに対する格差」が生まれてしまった。

「ダウンタウンの笑いってよく分からない」という視聴者に対しては、「分からん奴は、べつに分かって貰わなくて良い。でも可哀想な子やな、頭どっか打ったんかな」と堂々と言ってしまう。

まあそんなことありつつも、彼らはお笑いの天下を30歳頃には取ってしまい、1993年頃には長者番付でトップ層に躍り出ます。

またダウンタウンの特異点に、「コンビで番組をやる」というのを未だに続けていること。ソロをやりつつも、コンビでの番組は週何本もある。そのどれもが長寿番組。まさしく「2人揃ってダウンタウン、どうぞよろしく」状態。

これは他のコンビにはありえないことです。
だいたい、どちらかが人気が出るか、番組の意向で、ソロ活動するもの。先のコント55号の萩本欽一も、ツービートのたけしも、紳助竜介の島田紳助も、ウッチャンナンチャンも、最近ではナイナイも……

その例外たるダウンタウンは、ソロよりもコンビとしての面白さがあるわけで、視聴者、番組制作者、スポンサー、事務所から認められている訳です。もちろん本人達の利害の一致というか、馬が合っているのもあるというか(松本は「長年の夫婦みたいやけど、まあ、もうセックス・レスですけどね」と言ってますが)。

ダウンタウンというジャズメン

さて、本記事の本題。

私は常々、「ダウンタウンというのはジャズメンではないか?」という説を抱いています。

ジャズメン、というか、2人ジャズバンドというか。

例えば、『ガキ使』では2人だけによるフリートークをやるのが恒例です(今もやってるのかな?)

そこで出囃子と共に出て来た2人は、だらだらと話を始めます。

最近あったことがメインなのですが、気づけばボケツッコミのフリー漫才になっており、それがものすごく面白い。

もちろん、事前に台本などはありません。

そこから視聴者からのハガキ(たとえば「松本さんはジャニーズ事務所に入っていたそうですが〜」等)を浜田が読んで、それに対して松本がボケる、というのが一連の流れ。

笑点に見られる大喜利とはまったく違います。

 

「これってジャズの演り方と一緒じゃん!」

というのも、ジャズは基本インプロヴィゼーション、つまり即興演奏で構成されています。

誰かがあるメロディを奏でたら、それに対してレスポンスするよう自分なりの演奏をその場で瞬間的に作るのです。

楽譜は基本存在せず、コード(和音)進行に則った演奏を元に、それぞれのソロや、合奏が繰り広げられます。

多くのジャズメンは優れた即興演奏家でありますが、それでもジャズ史上最高のアドリブを奏でたのは、チャーリー・パーカーに他なりません。

そして、相方としてディジー・ガレスピーがいました。

この2人が共演したライブは最高だった、とは若きマイルス・デイビスのお言葉。

ダウンタウンの場合、当然、パーカーが松本で、それを補佐あるいはツッコミを通して、松本のボケを分かりやすくするため濾過(ろか)するのが浜田さんですね。

……というか、ダウンタウンという名前自体が、ジャズっぽいです。

(ちなみに。お笑いコンビは「ん」がコンビ名に付くと売れる、という有名なジンクスがあります。ダウンタウンからしたら先輩ですが、とんねるず、ウッチャンナンチャン、ナインティナイン、爆笑問題、ロンドンブーツ1号2号……あと名前に「し」が付くと売れるとか。志村けん、ビートたけし、明石家さんま、タモリの本名は森田一義、石橋貴明、木梨憲武、松本人志、浜田雅功、内村光良……あっ、ナンちゃんは……)

 

ここで提案です。

ジャズが分からない人は、そんなダウンタウンのトークの構造を観てみると、理解できたりするんじゃないでしょうか。

逆もまた然り。

もちろん、好き嫌いはありますけどね。

ことダウンタウンの場合は、選民意識が極度に強い笑いをやります。

分かる人には分かる、分からない人には分からない」

そんな世界というか、思想の持ち主ですから。

人類史上最高の即興ボケ

最初にも書きましたが、件の松本問題は、よく分かりません。

ただ、根拠もはっきりしない下馬評に振り回されるのは危険です。

芸能だけじゃなく政治でもなんでもね。

 

最後に、私が1番好きな松本人志の即興ボケを。

かつて音楽番組『HEY! HEY! HEY』の生公開収録がありました。

で、あるバンドが、以前『HEY!HEY!HEY!』に出演。

そのバンドのメンバーの奥さんは、ちょうど出産間近で、その日の収録が終わったらすぐに病院へ駆け、子どもが生まれるのに立ち会いたかったそうです。

が、例によって松本が大幅に遅刻。

結果、出産に立ち会えなかった。

それでその時のことを、この公開収録で浜ちゃんが、「え、なんで遅れたん?」と追求します。

さすがの松ちゃんもだんまり……

と思いきや、やがてこう言い放ちます。

「……いや、僕が立ち会ってたんですよ!」

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音楽屋/文章屋/快楽探究家。美術系も復活。総合コンテンツ制作会社代表。人生という長い暇つぶしの中、いかに退屈しないで楽しんで生きるかを考えてます。
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